エチオピア・コーヒーの品種
アメリカCounter Culture Coffee出版A Reference Guide to ETHIOPIAN COFFEE VARIETIES(エチオピア・コーヒーの品種)を参考に、エチオピア・コーヒーの品種分類に関して概略をまとめました。
「品種」の定義
先ずは、以下ここで使用する用語「品種」を定義します。同書籍では全てVarietiesという英単語が使われており、同英単語の日本語訳は分類学上では「変種」となっています。しかし同書籍では、Cultivar「栽培品種」に相当するものも含め全てVarietiesで統一しています。
コーヒーに関しては分類学上の「種」の下位にくる「亜種」「変種」はないとの理解に立ち、ここでは「アラビカ種」の下位にくるものを全て、日本でコーヒーを語る際に一般的に馴染みのある用語「品種」をVarietiesの訳語として使用することとします。
「ブルボン」「ティピカ」
エチオピア国内では、同国で生産されるコーヒーを、便宜的に「ブルボン」、「ティピカ」に分類することはありますが、これはコーヒーノキの新芽が出た頃の葉先の色が緑のものを「ブルボン」、ブロンズ色のものを「ティピカ」と称しているに過ぎず、エチオピア以外の国で栽培されている「ブルボン」、「ティピカ」との関係はありません。同書籍では、エチオピア・コーヒーの品種を「ブルボン」系、「ティピカ」系に分類しても、同国内特有の自然環境下で育ってきたコーヒーの様々な特殊性や独自性を反映することはできないと説明しています。
エチオピア・コーヒーの品種 (Varieties)
世界のコーヒー業界では、エチオピア・コーヒーの品種を「エアルーム」(Heirloom)と総称するケースもありますが、現状では同用語の定義が統一されていません。そこで同書籍では、エチオピア・コーヒーを、「『ブルボン』、『ティピカ』分類」、また「エアルーム」でもなく、以下2つのカテゴリーに分類しています。
- ジンマ農業研究所(JARC: Jimma Agricultural Research Centre)にて、研究・公開された品種:「JARC品種」
- 特定の地域にみられる在来品種(Regional Landrace Varieties):「在来品種」
現在、全てのエチオピア・コーヒーは「エチオピア・コーヒーの品種・相関図」にある「JARC Varieties」から枝分かれしている40品種、もしくは「Regional Landrace」に繋がる25品種の中のいずれかに分類されます。各グループに所属するサブ・グループ、および品種数をまとめると以下のようになります。
カテゴリ | グループ | サブ・グループ(地域) | 品種数 |
JARC品種 | 1974/1975コーヒー炭痕病 |CBD耐性セレクション | ウッシュ·ウッシュセレクション ワシ·セレクション メトゥ·ビシャリ·セレクション ゲラ·セレクション | 1 4 6 2 |
合計 | 13 | ||
CLR(さび病)耐性 | 3 | ||
ROSTOMセレクション | 2 | ||
ハイブリッド | 干ばつ耐性·ハイブリッド 高収穫ハイブリッド | 3 3 | |
合計 | 6 | ||
スペシャルティグループ | シダマ、及びイルガチェフェ ゲラ ワラガ ハラルゲ | 4 4 4 4 | |
合計 | 16 | ||
JARC 品種合計 | 40 | ||
在来品種 | 西部、及び南西部 | 10 | |
シダマ、及びイルガチェフェ | 3 | ||
ハラルゲ | 12 | ||
在来品種合計 | 25 | ||
エチオピア・コーヒー品種合計 | 85 |
以下、代表的なグループ「1974/1975 CBD(コーヒー炭疽病)耐性セレクション」、及び同グループ内のサブ・グループ「ワシ・セレクション」、「メトゥ・ビシャリ・セレクション」について説明します。
「セレクション」の定義
ここでは、JARCが特定の地域に自生しているコーヒーノキ群から特定の特長(例:さび病耐性)を示していたコーヒーノキを選別・採取することを示します。上図のサブ・グループ「セレクション」の前に記された「ゲラ」等は選別・採取が行われた地域を指します。
グループ:1974/1975 CBD(コーヒー炭疽病)耐性セレクション
JARCカテゴリーの同グループに属する13品種は、全て74、もしくは75で始まる番号を品種名としています。74、75はそれぞれ選別・採取が行われた年(例:74は1974年)を示します。
サブ・グループ:ワシ・セレクション
1972年、アラビカ種の原産地とみられているカファ地方にあるワシ村で初めて炭疽病耐性の強いマザー・ツリーが認められました。ワシ村では、1974年に炭疽病耐性特性を示す99のコーヒーノキが選別・採取され、JARCでの研究の結果、744、7440、7454、7487の4品種が公開されました。
サブ・グループ:メトゥ・ビシャリ・セレクション
メトゥ・ビシャリでは、1974年に炭疽病耐性特性を示す76のコーヒーノキがマザーツリー(Mother Tree)として選別・採取され、JARCでの研究の結果、74110、74112、74140、74148、74158、74615の6品種が公開されました。そのうち74110、74112、74165の3品種は、エチオピアのほぼすべてのコーヒー生産地で栽培されており、エチオピア全土で最も伝播している品種です。
A Guide to ETHIOPIAN COFFEE VARIETIESについて
同書籍は、本プラットフォームのエチオピアでのオペレーションを担うCo Qua Trading のMoata Raya(モアタ・ラヤ)氏の研究仲間であるジンマ農業研究所(JARC)出身のGetu Beleke(ゲトゥ・ベレケ)博士が執筆し、アメリカ合衆国ノース・カロライナ州ダーラムを本拠とするCounter Culture Coffee(カウンター・カルチャー・コーヒー)により2018年に出版されました。